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大挙8頭受託、新種牡馬フィエールマンにかける手塚師のロマン 産駒にかける責任感と覚悟

 18年の菊花賞を制したフィエールマンと手塚師(左から2人目)。産駒とともにまた新たな物語が始まる

 ダービーからダービーへ-。JRAは12年から2歳新馬戦をダービー翌週からスタートさせた。息つく間もなく、頂点獲りを目指す次世代の戦いは既に始まっている。

 若駒の仕入れは調教師の腕の見せどころ。各厩舎のラインアップを見ていると、個性が出ていて実に面白い。なかでも、自らが手掛けたG1・3勝馬フィエールマンの産駒を大挙8頭そろえた手塚貴久調教師(59)=美浦=は、未知な面が多い新種牡馬に命運を託す大胆な戦略に。真意を問うと「半分、趣味(笑)」とおどけられたが、ロマンと期待度は相当なもの。「たぶん、ウチの馬が走らないと、他も走らないと思う」と、産駒にかける責任感と覚悟が感じられた。

 長く栗東に勤務していた私はフィエールマンの現役時代を取材したことはなかったが、2歳時は特に目立つ存在ではなかったという。「6月ごろは全然ダメだった。当時は牧場の評判も良くなかったからね。良くなってきたのは8月を過ぎてからかな。(現役時代の)最後は馬体に幅がグッと出ていたけど、少しずつ、時間とともに成長してきた感じ」と振り返る。

 そのあたりは産駒にも伝わっているようで「どうしても薄手に出る。大きな馬でも470キロぐらい。500キロの馬はまだ出ていないと思う」とやや悩ましげ。調教に関しても「スイスイとは動かない。だんだんと動くようになるだろうけど…全体的に奥手だね」と粘り強く成長を待つ。

 かつて手塚師が手掛けた管理馬では、13年朝日杯FSを制したアジアエクスプレスと、マイル重賞で3勝を挙げたヤングマンパワーが先に種牡馬入り。「アジアエクスプレスの子(ピューロマジック)が葵Sを勝っていたね」と産駒のJRA重賞初勝利を喜ぶが、師にとって、やはりフィエールマンは別格。「そりゃもう、能力は段違いに上ですから」。大種牡馬ディープインパクト亡き後、その後継争いはまさに戦国時代。勝ち抜くのは容易ではなく、生産界の見切りも早い。それだけに「1頭だけでもいいので、初年度からいい馬が出てほしいね」とエールを送り、産駒の活躍を信じる。

 8日の東京5Rでは、先陣を切ってレイヤードレッド(牡2歳)がデビューした。祖母ニシノマリア、母エキナシア、きょうだいのジュニパーベリー、オーキッドロマンスも手塚師が手掛けた。レースは善戦及ばず4着に敗れたものの、「思っていたよりも、いい感じで運べていた。まだ力がつき切っていない分、最後の坂で力尽きたけどね。まあ、まだ時期が来ていませんから。これからですよ」。今後の伸びしろを思えば、上々の滑りだしと言えるだろう。

 厳しい競争社会にあって、こうした血の紡ぐロマンを感じられることも競馬の楽しみの一つ。かく言う私もロマン派だ。「そのうち、厩舎にフィエールマンとシュネルマイスター(21年NHKマイルC制覇、昨年引退→種牡馬入り)の子しかいなくなったりしてね」。そう言って笑みを浮かべた手塚師の挑戦をこれからも応援したい。(デイリースポーツ・松浦孝司)


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