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あの時、あの重賞
【2019年 日本ダービー】『持てるエネルギーを燃やし尽くした晴れ舞台』ロジャーバローズ
【2019年 日本ダービー】
新ひだか町の飛野牧場で誕生したロジャーバローズだが、セレクトセール(当歳)に上場され、7800万円の値が付いたエリートである。父は日本競馬を一新させたディープインパクトであり、昨年のシャフリヤールまで7頭の日本ダービー馬を送り出した。母リトルブックはイギリス産(その父リブレティスト)は未勝利だが、その半姉に英G1を制したドナブリーニ(ドナウブルー、ジェンティルドンナの母)がいる。
ノーザンファーム空港での育成は順調そのものであり、2歳7月に栗東へ移動。当初から前向きに動け、仕上がりも早かった。翌月の新潟(芝2000m)でデビューすると、好位追走から楽々と抜け出す。騎乗した戸崎圭太騎手は、こう声を弾ませた。
「躍動感にあふれたフットワーク。気性に幼さを残すけれど、センスが良く、上手に走れました。長めの距離が向くタイプですよ」
紫菊賞(2着)はアドマイヤジャスタの強襲に屈したが、年明けの福寿草特別を完勝する。挫跖を発症し、スプリングS(7着)より再スタート。京都新聞杯(2着)でレッドジェニアルのクビ差に食い下がり、晴れてダービーへと駒を進めた。
12番人気(単勝93・1倍)に甘んじたとはいえ、引き当てたのは絶好の1番枠。果敢に先手を主張すると、大逃げを打ったリオンリオンを見ながら運び、実質、単騎で行くかたちに持ち込んだ。向正面から後続との差を広げ、早めにスパート。直線半ばで先頭へ踊り出る。懸命に伸びるダノンキングリーをクビ差で振り切り、栄光のゴールに飛び込んだ。
「びっくりです。勝ったと思った直後、頭の中が真っ白。ペースが速くなり、この馬に絶好の展開でした。差されても仕方ないと腹をくくり、後ろを待たずに追い出した結果。ロジャーバローズは辛抱強く、坂を上がってから、もうひと踏ん張りしてくれましたね。持久力比べは大歓迎。ほんとタフな馬です」
と、念願のダービージョッキーとなった浜中俊騎手は満面の笑みを浮かべる。一方、角居勝彦調教師は照れくさそうな表情で静かに口を開いた。
「スプリングSは初の長距離輸送でパニック状態になり、力を発揮できませんでした。それでも、精神面に配慮した調整を心がけ、日に日に落ち着きを取り戻してくれましたよ。京都新聞杯で惜敗したとはいえ、我慢が利き、長く脚を使えるのが持ち味です。ここも先行策を想定していましたので、最内枠は恵まれたと思っていました。速い馬場への適性に心配はありましたが、離れた2番手はイメージ通り。でも、後ろから迫られ、どこまで粘れるか、ひやひやして見ていました。
厩舎が解散間際(角居師は21年2月に勇退)にあるタイミングですし、皐月賞に続き、ダービーに勝て、とてもうれしいです。ただし、同時にかなしいこともありました。ゴール前では出遅れた皐月賞馬(サートゥルナーリア、4着)の追い上げにも注目していて、1番人気(単勝1.6倍)を背負った大事な一頭が期待を裏切ったことが申し訳なく、複雑な心境ですよ。ウオッカでダービーに優勝したときの舞い上がった気持ちとは違いますね。
でも、ロジャーバローズを応援してくれたファンもいたはずです。セレクトセールで見た当時より、ずっといい馬ですよ。まだキャリアが浅く、これから成長するはず。オーナーの希望があれば、凱旋門賞に向けて準備したいと思います」
ところが、フランス遠征を見据えて調整中に右前の屈腱を損傷。電撃的に引退が発表された。
大きな期待を託され、2020年よりアロースタッド(2年置きにイーストスタッドで繋養)にて種付けを開始したロジャーバローズ。ファーストクロップは現1歳となった。産地の評判は上々であり、次世代のダービーへと新たな夢をつないでいく。
第86回東京優駿(GI)
1着ロジャーバローズ 牡3 57 浜中俊 角居勝彦
2着ダノンキングリー 牡3 57 戸崎圭太 萩原清
3着ヴェロックス 牡3 57 川田将雅 中内田充
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