東京・芝2400m
コース図・コース高低断面図
元JRA騎手 ダービージョッキー 大西直宏の解説
新潟の千直コースと共に僕にとって非常に想い入れのあるコースですね。
日本ダービーをサニーブライアンで勝たせてもらったことも勿論ですが、デビュー2年目の時に第1回のジャパンカップでゴールドスペンサーに騎乗させていただき、日本調教馬最先着(5着)を果たしたことも、僕にとって後の騎手人生に影響を与えた大きな出来事だったと思っています。
芝2400mという条件は基本的には非常に乗りやすいコースです。そもそもレース数が少ないことや、長距離戦であることから、道中はみんなが自分のペースを守って落ち着いて乗っています。
ゴールまでが遠い分、向正面や3コーナーでは動きづらいですし、本当に淡々と流れることが多いですね。距離が長いため、直線に向いたところで脚が残っていない馬も多くなるので、馬群が自然とバラけて進路も見つかりますし、直線は力があれば確実に伸びてこられるので競馬としてはしやすいです。
ただし、やはり日本ダービーだけは全くの別物です。乗っている騎手全員が本当に必至なので、スタートから1コーナーまでの殺到具合が平場などとは全く違いました。『ダービーポジション』という言葉は言われ始めて久しいですが、1コーナーまでが勝負でしたし、大袈裟な話ではなく“みんな殺気立っていた”という感じでしたね。
また、日本ダービーともなると観客の多さも含め独特な雰囲気に包まれますので、乗り役サイドとしては“如何に平常心でいられるか”も大きなポイント。
98年のダービーでは、福永祐一騎手がキングヘイローで初挑戦しましたが、平常心を欠いてしまい、それが馬にも伝わってしまったことでそのまま持ってかれてしまって14着と大敗を喫しました。ただ、この時の経験があったからこそ、のちのワグネリアン、コントレイル、シャフリヤールへと繋がっていることは確かです。
2021年のダービーでは、横山武史騎手がエフフォーリアで初挑戦ながら2着。レース後、界隈では「あと僅か何が足りなかったのか?」というのが話題になったようですが、それは経験だと僕は思います。ダービー初騎乗であの競馬は実に堂々としたものだと感じましたが、その上を行ったのが福永祐一騎手。まさに経験値が最後の決め手になったと言えるでしょうね。
同じ事は2014年のワナンドオンリーの横山典弘騎手とイスラボニータの蛯名正義騎手、2013年のキズナ武豊騎手とエピファネイア福永騎手、2008年のディープスカイ四位騎手とスマイルジャック小牧太騎手などにも言えること。勝っているジョッキーと勝っていないジョッキーとの経験値の差が、その気持ちの余裕がそのまま結果に現れることが多いのも、日本ダービーならではでしょう。
さて、芝2400mの馬券的な狙いを述べるなら『地力&勝負度合い』というフラットな見方でいいと思います。ただ、こと日本ダービーにおいては“別物”であり、様々な関係者のアツい想いが混じり合う一戦。陣営の本音、思惑、作戦などを知っておくことが的中への近道なのは間違いないでしょうね。
僕が協力している【WORLD競馬WEB】では、直近10年の日本ダービーでも“先行”の極秘作戦を掴んでいた◎ワンアンドオンリーから12番人気マイネルフロストまで完全に引き切り10万馬券的中をお届けした14年を含め、
◎キズナから8番人気アポロソニックまで完全に引き切り5万馬券的中の13年、未だ記憶に新しい大勝負レースとして馬連万馬券(ダノンキングリー・ロジャーバローズ)を仕留めた19年などなど数多くの的中をお届けしているようですが、そういった離れ業ができるのも、公に情報が出にくいビッグレースでも確実に関係者の本音を掴んでいるからですね。