
福島・芝1800m
コース図・コース高低断面図


元JRA騎手 ダービージョッキー 大西直宏の解説
重賞で言えば福島牝馬SやラジオNIKKEI賞(旧:ラジオたんぱ賞)が行われる舞台。
この芝1800mは、ミヤギロドリゴとのコンビで勝利を挙げたり、福島牝馬Sでスターリーヘヴン(14番人気2着)やマイネヌーヴェル(10番人気2着)で大穴をあけたりなど、芝2000mと並んで僕にとってもなにかと印象深いコースではありますね。
実は、現役時代に騎乗している中で、特に芝の中距離戦での立ち回り方については、僕なりに極めたものがあります。
福島は小回りのローカルコース、加えてレースレベルも低いとなると、大半の騎手たちはそれを強く意識して、早めの仕掛けで押し切りを狙いがちになります。
この動きは半ばレースの中で常識化していたもので、大体3コーナー入り口にある残り3ハロンのハロン棒を目印に、そこからレースが動き出していました。
しかし、馬場が荒れた開催後半や秋の福島(アキフク)では、実際はどの馬も直線半ばからはバテてしまい、最後はみんなで流れ込むようなレースになっていたんです。
僕はそこに注目して、他の馬が動き始めても1ハロン分は我慢して、4コーナー中間、残り400mあたりから外を回って追い出すようにしました。すると、自分の馬はゴールまで脚が残り、早仕掛けと荒れた芝で脚の止まった馬をまとめて差し切れるんです。
3コーナーでは他馬の動きをやり過ごして内で脚を溜めていればいいし、4コーナーからは内が荒れてくるので、ここから外に回って追い上げることで、距離ロスと馬場の綺麗なところを通れる分で相殺できます。
直線はスピードに乗せたまま、自然と伸びる大外から追い込むことが出来るのもこの作戦のメリットですね。
レベルの高いレースや芝の状態のいいコースでは、こんな悠長なことをしていては前を捉え切れないまま終わってしまうので、まさにローカルの福島だからこそ決まる技だったと言えるでしょう。
ちなみに、現役時代から仲の良い吉田豊騎手は、その当時、某競馬雑誌のインタビューで「福島の芝が荒れてきたら、もう大西さんの天下」と語ってくれていましたが、そういった発言が飛び出したのも、先のような作戦を駆使して僕が存在感を示せていたからだと思います。
やはり馬場状態次第で馬券の狙い方は大きく変わってきますが、騎手では『田辺騎手』が狙い目ですね。地元が福島という事もあって、夏場の主場はもちろん、春&秋にもスポット参戦が見受けられますが、僕が見る彼の特徴は“我慢強い”ところ。
アサマノイタズラで制した21年のセントライト記念が分かり易いところですが、他馬が早めに動き出してもそれにつられることなく最後の最後まで我慢して差し切りました。あの競馬は先ほど僕が述べた福島中距離の攻略法に通じるものがあります。芝の中距離戦で彼の名前を見かけたら注目する価値は大いにあると思いますよ。
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