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『猛々しくも上品な生まれながらのトップランナー』


【2015年 日本ダービー】

 8歳にして生涯最高の強さを発揮したキンシャサノキセキ(高松宮記念2回)が象徴するように、長期的な未来図を描き、プロらしい仕事を施してきた堀宣行厩舎。初となるクラシックの栄光を運んだのがドゥラメンテだった。
 1歳の春に初対面して以来、トレーナーも大きな希望を託していた。育成先のノーザンファーム早来を訪れるたび、順調な成長を感じ取っていたという。
「細身で上品。このファミリー(母アドマイヤグルーヴはエリザベス女王杯2回など重賞5勝、祖母が年度代表馬のエアグルーヴ)ならではのすばらしいバランスです。腰からトモにかけてゆったりできていて、それが卓越したバネの源になっている。キングカメハメハ産駒は、育っていく過程でラインが崩れるケースが多いとされ、つなぎの角度などへの配慮もポイントとなるのですが、ノウハウを蓄積している牧場サイドの対処によって、どんどん良さが際立ってきました」
 2歳6月に美浦へ。もともと秋のデビューを目指していたが、トレセンの環境に慣れさせるためのワンステップだった。
「ゲート試験の合格まで2週間ほどの期間でしたが、破格のスケールが伝わってきましたね。あの時点でも『生まれながらのG1ホース』というのが、スタッフとの共通認識。ただし、急に立ち上がったり、通常のメニューをこなすのにも、かたちに当てはまらない自己主張の激しさがありましたから。人とうまくコミュニケーションが取れるよう、段階を踏みながら導いていきたかった」
 北海道で心身を整え直し、9月に再入厩。翌月の東京(芝1800mを2着)で初戦を迎えた。ゲート内でじっとせずに出負け。行きたがるシーンもあったが、エンジンがかかってからは抜群の伸び脚を駆使している。
「調教は良いほうへ向かっていても、実戦でないと経験できない事項がたくさんあります。ジョッキーにもそれを理解してもらい、個性に沿って競馬を覚えさせたいなか、2戦目(東京の芝1800mを6馬身差で快勝)はターニングポイントとなりましたよ。好位でリズムに乗れたのに加え、ライアン・ムーア騎手はゴールまで集中するように教え込んでいた。ゲートの問題は持ち越しになりましたが」
 発走調教再審査の制裁。出走後はきめ細かく状態を見極め、次の計画を練るのが同ステーブルのスタイルではあるが、ノーザンファームしがらきでリフレッシュされる前に、さらに2週間、在厩を続けている。
「特にこの馬の場合、内面の状況もきちんと把握しないと。体が戻った翌々週にゲート裏へ連れていったら、不安で目が泳ぎ、汗だくに。クラシックに向けて賞金を加算したいところではありましたが、根本的な改善を最優先させました」
 身体の疲労は癒え、2月の東京で出走できるメドが立った。だが、難題のクリアに要する時間は不透明なまま。12月の帰厩後も、丁寧に準備を進めた。
「練習が休止となる年末年始に感情を静めたうえ、ゲートに縛りました。初日に抵抗して暴れましたが、以降はすんなり納得しましたね。これも、牧場での熱心な取り組みがあってのこと。感謝しています。再試験は実戦でも騎乗するジョッキーで受けなければなりません。調教から依頼した石橋脩騎手も、付きっきりで励んでくれました」
 1か月ほど時間を割き、晴れて合格。セントポーリア賞に臨むと、後続に5馬身もの差を付けた。
「ダッシュは遅かったのですが、枠内で我慢が利きました。上手に折り合えたのも収穫です。ただ、8分の態勢で送り出すつもりだったのに、想像以上に仕上がっていて。共同通信杯への参戦も視野に入れて始動させたといっても、注意深く回復具合を探り、ゴーサインを出しましたよ。中1週の高いハードルで、もう一度、ゲートを確認したかったんです」
 脚の使いどころが噛み合わず、半馬身差の2着に敗れたものの、上がり(3ハロン33秒7)はメンバー中で最速。着実な進歩も示していた。
「みなと一緒にスタートでき、前回と違って、4コーナーでぎこちなかったフォームも矯正されました。その反面、前半でかかってしまい、位置取りを悪くした点が新たな課題です。このローテーションを選択した以上、いいコンディションで使うには皐月賞に的を絞るしかない。ノーザンファームしがらきにて英気を養い、動きが一段と上向いてきました」
 綿密に入厩のタイミングを打ち合せ、3月下旬になって美浦へ。精神面を重視しながらも、十分な負荷がかけられた。いよいよ一冠目に挑む。
「誤算だったのは、選挙カーのアナウンスが響いてきて、装鞍所で一気に高ぶり始めたことでしたね。メンコ(耳覆い)を着用させてきましたし、耳栓など、他に対策を考えていなかったのが反省材料です。パドックでもなかなか収まらず、スペイン常歩みたいな仕草で。そんなとき、追い切りにも跨り、特徴をつかんでいたミルコ・デムーロ騎手が適切に接してくれました。返し馬から工夫。待避所でも他馬と離れ、意志の疎通を図っていた姿が印象的でしたよ」
 落ち着いてゲートイン。寄られてしまい、後方のポジションとなったのは想定外だったが、前に馬を置いて根気強く訓練した成果が表れる。道中はスムーズに追走。ところが、4コーナーでは大きく外へふくれてしまった。
「馬群の切れ目に持ち出そうとした際、回り切る前に手前を替えたのが原因。別にくせではなく、突発の出来事です。小回りコースや急坂への適性は未知でも、左手前のほうが断然、ストライドがいい。だから、直線で得意の手前となる右回りのほうが、むしろ適性があると見ていました」
 コースロスも跳ね除け、ラスト33秒9という同レース史上でも空前の末脚が炸裂。あっさり勝負を決めた。
「まだまだ積み重ねが必要だと見ていたのに。驚くしかないですよ。桁違いのポテンシャルがあってこその勝利です」
 そして、さらなる進化を遂げ、ダービーはレースレコードで快勝。多少は行きたがったが、中団をスムーズに追走でき、満を持して追い出されると楽な手応えで突き抜けた。
「皐月賞よりコンディショニングがうまくいった結果。暑くなり、輸送が堪える時季となりましたが、スムーズに到着し、競馬場の馬房でも落ち着いていました。装鞍所からパドックにかけても、前走と違って大人しかったですね。向正面で少しかかるところもありましたが、デムーロ騎手はよく考え、上手にコミュニケーションを取ってくれました。名前(ドゥラメンテは音楽用語で『荒々しく、はっきりと』の意味)と同様、荒々しいと言われ、スタッフともども恥ずかしい気持ちがあったのですが、落ち着いて競馬ができ、ようやく完成の域に達しましたよ。それでも、精神的にも、肉体面も、まだまだ完成されるのは先だと見ていたのですが」
 休養に入ったところ、以前から骨膜を抱えていた両ヒザに遊離している軟骨が発見され、手術を行うことに。慎重に態勢を整え直し、翌年は中山記念より再スタートする。格の違いであっさり優勝。ドバイ・シーマクラシックでは馬場入場時に右前を落鉄するアクシデントがあり、打ち直さずに出走を強いられながら、懸命に2着を確保した。
 結局、宝塚記念がラストラン。クビ差の2着したものの、入線後にバランスを崩し、複数の靭帯や腱を損傷してしまう。競走能力喪失の診断が下され、早すぎる引退が決まった。
 数多くの優秀な繁殖を集め、種牡馬としても人気は絶大である。ファーストクロップは2020年にデビュー。果たせなかった夢は、次世代へと受け継がれる。
 


第82回東京優駿(GI)
1着ドゥラメンテ  牡3 57 Mデムーロ 堀宣行
2着サトノラーゼン 牡3 57 岩田康誠  池江泰寿
3着サトノクラウン 牡3 57 ルメール  堀宣行

 単勝  190円
 枠連  580円
 馬連 1,980円
 馬単 2,220円

3連複  3,950円
3連単  15,760円




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